上腕骨頸部骨折について
骨粗鬆症について知ろう!
専門医による解説~その13
はじめに
こんにちは。このページは整形外科専門医の金井による様々な整形外科疾患の解説ページです。元ページの「コツコツグルメ」は、金井が自身の臨床経験から「あったらいいな」と思うサービスを形にしたもので、骨に関する総合的な情報提供サービスです。骨に関して不安や興味がある方は是非元ページもご供覧くださいませ。
さて、今回の記事では「上腕骨頸部骨折」について、なるべく分かりやすく解説していきます。
上腕骨頸部骨折とは
肩の関節近くの上腕骨という骨の骨折です。「転んで肩をぶつけたあと、動かせなくなった」らこの骨折を疑います。骨粗鬆症の方に多く、股関節・背骨・手首に次ぐ4番目に多い脆弱性骨折(脆くて折れるもの)です。折れ方の程度によって手術をしたりしなかったりします。
特徴
肩は自由度の高い関節なので動かせる範囲が広い反面、脱臼もしやすいです。骨折した時に脱臼を伴う場合も多く、放っておくと戻らなくなりますのでぶつけた後肩が動かせなくなったらすぐ病院へいきましょう。上肢の骨折なので歩行は可能で、緊急入院しなくて済む場合も多々あります。血のめぐりは比較的良い部位ですので、ズレがひどくなければ手術しないでも割と良く治ります。
治療法は
骨折したらまずは三角巾で固定です。腕一本は重いので、骨折部がズレないように三角巾で吊っておきます。手術が必要なのは「ズレがひどい」、「脱臼が戻らない」、「筋肉に引っ張られる剥離骨折」、「社会復帰を急ぐ」のいずれかです。
どんな手術をする?
大きく2種類、金属で骨折部を接ぐ「観血的骨接合術」か、折れた骨を取り除き金属で人工関節にする「人工骨頭置換術」または「人工肩関節全置換術」です。基本的には骨折が重篤だと折れた骨が助からず、人工関節手術になります。
観血的骨接合術
骨折部を整え、チタン合金で接ぎます。プレートを外側に当てて沢山のスクリューで止めるプレート法と、骨の頂上に穴を開けて金属の芯棒を入れて何本かのスクリューで固定する髄内釘法あります。それぞれ善し悪しがあり、骨折の形やズレ方などで決まります。結構担当医によって違うので主治医の先生と相談して決めましょう。少し解説しますね。
プレート法
肩の外側か前方を10-15cmくらい切ります。少し皮膚切開が大きいのが特徴ですね。大きく開けて骨折部を露出させて手術するので骨折部のズレや脱臼の整復をしやすく、しっかり治したい場合に選択します。上腕骨の頭が粉砕している場合や脱臼している場合が良い適応です。
髄内釘法
最初に皮膚を切らないで骨折部の整復を行い、肩の周辺にいくつか小さな切開を置きそこからドリルで骨に穴を開けて金属の芯棒を通す手術です。傷が小さく出血も少ないのでズレが比較的軽い場合に選択します。手術侵襲が少ないのが魅力ですね。
人工関節手術
ズレがひどい場合、大事な栄養血管が破綻しその後骨頭が壊れてしまう「骨頭壊死」が起こる場合があります。その恐れが強い場合や実際に起きてしまった場合は人工関節手術を行います。上腕骨の頭だけ取り替える「人工骨頭置換術」や受け皿になる肩甲骨の一部や筋肉の機能なども一緒に再建する「人工肩関節全置換術」など色々な術式があります。
手術のリスクは?
一般的な全身麻酔の手術のリスクは、出血、ばい菌が付く感染、手術侵襲を起因とする全身合併症(肺炎や尿路感染症、脳梗塞や心筋梗塞、肺塞栓(エコノミークラスシンドローム)など)です。また骨折手術の場合、骨がきちんとくっつかず痛みが続く偽関節、インプラントトラブル(緩みや破損)などで再手術になることがあります。
ほか肩関節の手術独自のものでは、術後脱臼、血管損傷(上腕動脈)、神経の障害(腕神経叢)などが挙げられます。
術後の経過
術後大事なことは「歩けるか」と「生活が成り立つか」です。上肢の骨折の場合は歩けるのですぐに退院出来る場合が多いです。あとは骨折と手術の具合から主治医が立てたリハビリ計画に沿ってリハビリをします。退院後も外来通院しながらリハビリを続けることになるでしょう。
外来通院
骨折の一般的な経過はこちらを参照ください。計画に基づいて外来リハビリを行い、まずは日常生活に困らない状態を目指します。少し具体例を挙げると洗顔、洗髪、洗濯などが出来る状態です。元通りまで動けば良いのですが元々自由度が高い関節なので術後組織の癒着もありある程度制限がかかることが多い部位です。大体6-12週間くらいで癒合していきます。インプラントは入れっぱなしの事が多いです。
私から伝えたいこと
この骨折は骨粗鬆症の人に多いことに注意しましょう。骨折に脱臼が加わるとやっかいなので早めに病院を受診しましょう。上肢なので、歩行可能で入院は長引かない事が多いです。40歳以上でこの骨折をした方は骨粗鬆症の検査を受けることをお勧めします。骨折後はしっかり骨に良い栄養を摂ることもお忘れ無く。
おわりに
今回の記事は以上です。「上腕骨頸部骨折」についてなるべく分かりやすく解説しました。
次回以降、「骨粗鬆症薬について」掘り下げてみようと思っています。お楽しみに。
骨折治療は、骨の材料がないと十分な効果が得られません。日々の食事から必要な栄養素(特にカルシウムとビタミンD)をしっかり摂る「骨活」も、治療の土台として欠かせません。
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【免責事項】 本記事の内容は、執筆時点でのガイドラインやエビデンスに基づき作成しておりますが、医学的情報の正確性や安全性を完全に保証するものではありません。 個々の患者様の病状や体質によって適切な治療法は異なります。自己判断での治療中断や変更は行わず、必ず主治医にご相談ください。
参考資料:
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創業医師 金井 研三(かない けんぞう)
東京生まれ湘南育ちの射手座。
横浜市立大学医学部卒、臨床経験10年超の整形外科専門医。
専門は脊椎外科。急性期病院で多忙な日々を送り研鑽したのち、地域医療に携わる。
地域における超高齢化と骨粗鬆症の増加に強い危機感を抱き、現役医師として働く傍ら、骨粗鬆症予防専門の食品と情報提供サービス「コツコツグルメ」を開発。予防医学×ビジネスに医師が直接コミットする必要性を訴えている。
「食から骨を守る」新しい仕組みづくりを通じて、SDGs目標3『すべての人に健康と福祉を』目標11『住み続けられるまちづくりを』の実現に貢献している。
日本の健康寿命を延ばし、骨折を減らして整形外科医の仕事をなくす――そんな未来を目指して、日々、啓発活動と臨床に取り組んでいる。