栄養から見た「骨活」完全ガイド
― 骨を支える4大栄養素と不足の実態 ―
はじめに
骨粗しょう症の予防・改善には「カルシウム」だけでは不十分です。
この記事では、骨を支える4大栄養素について解説します。
それぞれの働きと、不足の実態、そしてどう補うか?を、整形外科医の視点からわかりやすく解説します。
4大栄養素とその特徴
※ 出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020」「国民健康・栄養調査令和5年」
「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2015年版」
1.タンパク質 ― 骨の“構造材”
役割:骨の“足場”をつくる重要な構成要素。筋肉と同様、骨もタンパク質でできています。
特徴:一度に大量に摂っても吸収しきれないため、1日数回に分けて摂ることが大切です。
注意点:腎機能が悪くて摂取制限がある方は主治医に相談を。
目安摂取量:体重(kg)×1.2g/日
平均摂取量:67g/日 概ね充足
主な供給源:肉・魚・大豆製品(納豆、豆腐など)
2.カルシウム ― 骨の“材料”
役割:骨のセメント。硬さや密度をつくる「石灰化」の主成分です。
特徴:単独での吸収率は低いため、ビタミンDやマルトビオン酸、黒酢など吸収を助ける成分と一緒に摂るのが重要です。
注意点:サプリメントによる過剰摂取では心血管疾患のリスクが高まる可能性があるため、できるだけ食品からの摂取が望ましい。
目安摂取量:食品から700~800mg/日
平均摂取量:約517mg/日
平均不足量:約200mg
主な供給源:小魚、海藻、乳製品、野菜、豆類など
3.ビタミンD ― カルシウムの“サポーター”
役割:腸からのカルシウム吸収を助け、骨のリモデリングを調整します。
特徴:食事から摂れる天然型は肝臓・腎臓を通ってから働く(遅効性)。
その分体内に貯蔵し、週単位で「摂り貯め」することが可能。
注意点:肝腎機能が低下している人は吸収効率が下がる。薬としてのビタミンD(活性型)は特徴がかなり異なる。
目安摂取量:15~20μg/日(週105μg)
平均摂取量:7.3μg/日(週50μg)
不足量の目安:8μg/日(週55μg)
主な供給源:青魚(いわし、さんま、さけ)、きのこ類(きくらげ等)日光浴
4.ビタミンK ― 骨の“内側の調整役”
役割:骨たんぱく「オステオカルシン」の働きを助け、骨の質を整えます。
特徴:通常の食事で充足しやすい栄養素ですが、納豆や緑黄色野菜を避けたり偏食する人は不足の可能性があります。
注意点:ワーファリンという薬を服用中の方は作用を弱めることがあるため、主治医に相談してください。
目安摂取量:250~300μg/日
平均摂取量:260μg/日 概ね充足
主な供給源:納豆、ブロッコリー、小松菜、春菊などの緑黄色野菜
4大栄養素まとめ
これまで紹介してきた通り、骨にとって重要な栄養素は以下の通りです。
栄養素 | 役割 | 充足しているか | 補給のポイント |
---|---|---|---|
タンパク質 | 骨の土台を作る | △ | こまめな摂取が必要 |
カルシウム | 骨の主成分(石灰化) | ❎ | 吸収を助ける栄養と一緒に |
ビタミンD | カルシウム吸収を促進 | ❎ | 天然型は摂り溜め可能 |
ビタミンK | 骨の形成支援 | 概ね〇 | 納豆嫌い、野菜嫌いは△ |
よって、特にカルシウム・ビタミンDが特に足りていません。タンパク質に関しては、現状摂る量の上限が定められていないのと、沢山取った方が筋肉の損失が少ないという意見もあるので、△にしました。ビタミンKは一般的な食事で足りていると思います。
栄養は「自力本願」。
自分で意識して食事を整えることが、未来の骨を守る第一歩です。
栄養素の数字を確認したい方へ
文部科学省「食品成分データベース」では、食材ごとの公式の栄養成分が推計できます。
自分の食生活を見直す際の参考として活用してみてください。
→ 食品成分データベース(外部リンク)
今日から始める『骨活』:一日一骨のすすめ
骨のための習慣づくりに、私は「一日一骨(いちにちいちこつ)」というスタイルを提案しています。
これは、1日1回「骨に良い食品」を食べるというシンプルな方法です。
毎日が難しければ、三日に一度、週に一度からでも構いません。
大切なのは、骨を意識する習慣を作ることです。
コツコツグルメの一例:いわしの佃煮
専門医の栄養設計に基づき開発された「いわしの佃煮」の栄養素は以下の通りです。
●タンパク質:18g(1日量の約1/3)
●カルシウム:153mg(牛乳の約1.5倍、平均不足量をカバー)
●ビタミンD:29.4μg(約2日分摂り貯め)
この佃煮を週に一度取り入れるだけでも、随分骨作りへの貢献になります。
今後の展開について
以下のような食品開発を検討中です。
●カルシウムが摂れるおやつ
●ビタミンDとカルシウムを同時に摂れるふりかけ
現在の栄養と味を両立した一品料理に加え、
手軽さ・経済性・続けやすさを意識した商品づくりも目指しています。
皆さんはどんな商品があると嬉しいですか?是非ご意見をお願いします。
医師としての思い
私は整形外科医として日々、骨折や骨粗しょう症治療の現場に立っています。
その中で、骨を守る基礎は『栄養』で、そのために重要なのが『日々の意識』だと痛感しています(エビデンスもあります)。
このコツコツグルメというサービスが、みなさまの『日々の意識』を変え、『栄養』を支え、健康寿命を伸ばす小さなきっかけになれば幸いです。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

整形外科専門医