ビタミンD製剤について
骨粗鬆症を防ぐために!
専門医による解説~その14
はじめに
こんにちは。このページでは、整形外科専門医・金井が様々な整形外科疾患を解説します。今回は骨粗鬆症治療薬「ビタミンD製剤」について、分かりやすく解説します。
ビタミンD製剤とは
エディロール、アルファカルシトール、カルシトリオールなどの名前の薬です。腸管でのカルシウム吸収を促進し、骨密度を維持する働きがあり、骨粗鬆症治療において欠かせない基礎薬です。
なぜ欠かせない基礎薬か
理由は3つあります。
・日本人で不足しがちなビタミンだから
・薬の値段が安く続けやすいから
・長期間投与での副作用が少ないから
順に説明します。
不足割合について
ビタミンDは食事からの摂取と日光浴で生成されますが、日本では多くの人がビタミンD不足の状態にあります。例えば、東京慈恵会医科大学の研究では、日本人の98%がビタミンD不足という結果が出ています。日光不足や魚の摂取量の減少がその原因とされています。
値段が安い
ビタミンD製剤(例:エディロール)は、10%負担で月額140円程度です。一方、例えばテリボンという薬は効果が高いものの、10%負担で月額約5000円と高額です。経済的な意味でもビタミンDは骨粗鬆症治療を支える基礎薬なのです。
副作用が少ない
骨代謝に与える影響が少ないため、顎の骨が溶けたり、原因不明の骨折が生じたり、骨腫瘍を助長させたりする重大な副作用がないです。とはいえ腎機能障害と高カルシウム血症は要注意なので、時々採血でチェックするのが良いでしょう。
筋力改善効果
ビタミンDは骨だけでなく、筋肉にも作用することが最近わかってきています。ある論文によると、「ビタミンDは筋力を改善し、転倒リスクを19%低減させた」という報告もあります。
他剤と併用可能
他の薬と組み合わせて使える点もポイントです。例えばアレンドロンやプラリア、イベニティなどの骨吸収抑制薬と併用することで、骨粗鬆症治療の効果をさらに高めることができます。
食事と医薬品の違い
ビタミンDは『食事から摂れる天然型』と、『医薬品の活性型』に分けられます。天然型は肝臓と腎臓を通り活性型になります。医薬品はその課程を省略しているわけです。それぞれ強みがあって、
天然型の強みは、
・代謝の過程で貯蔵出来るため、週単位で『摂り貯めが可能』
・副作用(高カルシウム血症)が少ない
活性型の強みは、
・代謝が省略されているため、肝臓や腎臓が悪い人でも使える
・『早く』『良く』効く
ちなみにビタミンDを調べると、単位がμgとIUと二つあると思いますが、1μg=40IUです。医療の世界ではμgが一般的です。ざっくりと理解しておきましょう。
対骨粗鬆症のエビデンス
上記の通りビタミンDは非常に有用な薬ですが、治療薬としてのエビデンスは強い方ではないです。例えば強力な「アレンドロン」と比較すると下記のような感じです。
エディロール | アレンドロン | |
骨折リスク低減 | 22% | 20~50% |
骨密度改善 | 腰椎で3% | 腰椎で6~8% |
ビタミンDの使い方
主治医の先生によって違いがあると思いますが、
「骨粗鬆症の診断と同時に開始され、程度によって他剤と併用していく」
という使い方をします。他の薬の開始と共に止めたり、副作用で減量・中止されることもあります。
薬を止められることはあるの?
これは骨粗鬆症薬全般に言えることですが、「骨強度が充分」で「生活習慣も理想的」であれば薬を止めることもあるのですがあまり多くはないです。長期間投与により一時的に休薬したり、本人の状況から薬を整理する意味で終了となることもあります。主治医と相談、ですね。
私から伝えたいこと
ビタミンD製剤はリスクが少なく、安価で、それなりのエビデンスがある薬です。不足している方が多いので診断が付いたら薬を飲みましょう。予備軍の方は食事と日光浴を意識して不足しないように心がけましょう。
おわりに
今回の記事は以上です。「ビタミンD製剤」についてなるべく分かりやすく解説しました。
予備軍の方は特に食事からの摂取不足に注意してください。ビタミンDが豊富な食材は限られているので是非この「コツコツグルメ」で学び骨活をして下さい。
次回は女性ホルモン剤「SERM」について解説しようと思います。
この活動は皆さまの支援に支えられています。この記事がいいねと思った方は商品も是非食べてみて頂けると嬉しいです。
専門医が考えた骨活完全ガイド:
過去記事一覧:
- 骨粗鬆症について知ろう!専門医による解説~その1 骨粗鬆症とは
- 骨粗鬆症について知ろう!専門医による解説~その2 骨粗鬆症の予防と治療
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参考資料: