骨粗鬆症について知ろう!
専門医による解説~その9
変形性膝関節症について
はじめに
こんにちは。このページは整形外科専門医の金井による様々な整形外科疾患の解説ページです。元ページの「コツコツグルメ」は、金井が自身の臨床経験から「あったらいいな」と思うサービスを形にしたもので、骨粗鬆症専用の食事サービスです。骨の栄養に興味がある方は是非元ページもご供覧くださいませ。
今回の記事では「変形性膝関節症」について、なるべく分かりやすく解説していきます。
膝関節とは
膝関節は大腿骨・脛骨・腓骨・膝蓋骨の4つの骨と、クッションである左右の半月板・4本の靭帯組織・関節液を作る滑膜等で出来ており、体重を支え曲げ伸ばしする部分は軟骨で覆われています。軟骨と関節液のおかげで表面はスベスベ、非常に滑らかに曲げ伸ばしが出来るようになっています。肩や肘や手関節と違い、常に体重を支えながら曲げ伸ばしをする働き者の関節です。
変形性膝関節症とは
非常にスベスベな膝関節ですが、二足歩行で長生きなヒトが最も消耗しやすいのがこの膝関節です。歩行時には体重の3倍ほど、階段昇降では6倍くらい負荷がかかり、近年はカロリー過多による体重増加もあり膝にとっては厳しい環境です。経年劣化・怪我による膝の不安定化・骨折による変形などで半月板は痛み軟骨が摩耗し関節は変形し動きが悪くなり痛みが出ます。これが変形性膝関節症です。大腿骨と脛骨の内側がすり減ってO脚に変形する場合が多いです。痛くない人も含めると日本の40歳以上のなんと55%、2500万人もいるそうです。
治療法は
まずは切らない保存療法から勧められることが多いと思います。生活指導、飲み薬、貼り薬、リハビリテーション、注射などの保存療法をおこない、それでもダメなら変形の程度なども考慮した上で切る手術が検討されます。
生活指導は具体的になに?
まず膝の安静です。具体的には膝を曲げた状態で力を込める動作を避けることです。階段昇降や激しいスポーツ、自転車なども膝に負担がかかります。肥満のある方は減量することも重要です。スポーツをするなら浮力で体重が軽くなるプールがお勧めです。
また、装具も有効です。変形性膝関節症の方は、歩行中に膝が左右に揺れる事が多く、膝の左右に支柱が付いて左右の揺れを抑えるサポーターが合理的です。他、O脚を修正するためのインソール(外側が高く傾斜がついたもの)もよく用いられます。太もものトレーニングも重要で、膝を伸ばした状態で脚を上下する運動が良いでしょう。負荷が足りなければ足首に重りを巻きましょう。
その他の保存療法
薬はロキソニンやカロナールなど一般的な痛み止めや湿布薬、ヒアルロン酸や局所麻酔薬の関節注射などにより痛みのコントロールを図ります。最近では、再生医療分野で自身の血液を遠心分離した上澄みを注射するPRP療法(多血小板血漿)が注目されその効果について盛んに研究されています。PRP療法は現状保険が効かないので高額な点に注意です。
手術が勧められる場合は?
保存療法によっても変形による膝関節の痛みが看過できない場合に考慮されます。手術をするにあたっては膝関節を内側・外側・膝蓋骨と大腿骨の間の3つに分け、それぞれ変形の程度を評価し、脚全体のバランスも考慮した上で手術治療の作戦を立てます。大腿骨や脛骨を切って角度を変える骨切り術や、関節を部分的に人工関節にする手術、関節全体を人工関節にする手術など様々な術式があります。2021年度のデータで人工膝関節手術は年間7万7千件くらい、骨切り術は年間7千件ほど行われています。
手術の効果は?
「膝がまっすぐになって、痛くなくなった」を目指します。人工膝関節手術は70年以上の歴史があり改良を繰り返していて、2024年現在術後の満足度はかなり良いことが知られています。骨切り術は膝の変形が重度の方には行えず、またリハビリに時間がかかりますが、自分の関節を残せるため膝の機能面では人工膝関節より優れます。
手術の限界
人工膝関節は非常に優秀な手術治療と言えますが、元々の健康な膝とは違うことに注意が必要です。正座は出来ないし、激しいスポーツも勧められません。骨切り術は正座できる事もありスポーツへの復帰も目指せますが、全員に適応出来る手術ではなくリハビリには時間がかかるのと、後に金属を抜く抜釘術が必要になります。
手術のリスクって?
一般的な全身麻酔の手術のリスクは、出血、ばい菌が付く感染、手術侵襲を起因とする全身合併症(肺炎や尿路感染症、脳梗塞や心筋梗塞、肺塞栓(エコノミークラスシンドローム)など)です。人工膝関節の場合は感染が起こると厄介になるケースが多いです。また、インプラントの緩みや部品の摩耗で再手術になることがあります。
骨切り術の場合は、骨の癒合がうまくいかない偽関節になると大変です。また、残した自分の関節がその後さらに変形した場合、今度は人工膝関節手術が必要になる場合があります。
リハビリ計画と入院期間
人工膝関節の場合は、手術の後すぐに体重をかけてリハビリが出来ます。数日は血抜きの管が関節に入っている場合もあります。膝の曲げ伸ばしの訓練や歩行訓練を実施し2週間程度で歩けるようになり退院となる場合が多いです。骨切り術の場合は何週間か手術した方の脚に体重をかけないで過ごし、徐々に歩行訓練を進めるためその分入院期間が長くなります。
人工関節は10年ごとに入れ替える?
患者さんに「人工膝関節手術を受けると10年くらいに一回入れ替えの手術があると聞いた」と質問されたことがあります。答えは、「諸事情でインプラントを入れ替えることはあるが、一般的に10年に1度よりは長持ちする」です。確かに人工膝関節は主にチタンやコバルトクロムの合金とポリエチレンで出来ているので、耐用年数があります。大体15~20年くらいと言われていますが、最近はインプラントの機能改良やその後の生活指導等によってより長持ちしている方が多いようです。
膝の手術と骨粗鬆症
人工膝関節手術にせよ、骨切り術にせよ、インプラントの土台となるのは骨です。骨粗鬆症があると人工関節の沈み込み、術中の骨折などのリスクが高くなります。骨切り術では骨癒合が不利になります。いずれにせよ骨粗鬆症であることは術後の合併症の一因になり得るため、予防・早期発見・早期介入が重要です。
膝の手術と栄養
海外の論文で「人工膝関節術の術後に分岐鎖アミノ酸を多く摂った方が太ももの筋肉の筋萎縮が少なかった」というものがあります。手術前後の栄養療法が術後の経過に影響する可能性が示唆されているのです。分岐鎖アミノ酸が最も豊富に含まれている肉は「コツコツグルメ」でメイン食材の鶏肉です。私が骨粗鬆症対策として「コツコツグルメ」を作り、術後ケア食としてもお勧めしている理由です。
私から伝えたいこと
変形性膝関節症は有病率が高く日本人のほとんどがなる病気と言えます。また年間手術件数も多く、誰もがそのうち手術を考える可能性があります。骨粗鬆症があると手術や術後のリスクが高まるので、膝の痛みがひどくなる前に運動や食事など生活習慣から見直していきたいですね。普段の食事からしっかり骨の材料を摂るよう心がけて下さい。
おわりに
今回の記事は以上です。「変形性膝関節症」についてなるべく分かりやすく解説してみました。ほとんどの人が無関係では居られない病気なのでしっかり理解して生活習慣を見直すきっかけになれば幸いです。
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次回は骨粗鬆症関連骨折の一つ「橈骨遠位端骨折」について解説していこうと思います。
過去記事一覧:
- 骨粗鬆症について知ろう!専門医による解説~その1 骨粗鬆症について
- 骨粗鬆症について知ろう!専門医による解説~その2 骨粗鬆症の予防と治療
- 骨粗鬆症について知ろう!専門医による解説~その3 骨に必要な栄養素
- 骨粗鬆症について知ろう!専門医による解説~その4 栄養療法とエビデンス
- 骨粗鬆症について知ろう!専門医による解説~その5 機能性原料と医薬品の違い
- 骨粗鬆症について知ろう!専門医による解説~その6 大腿骨近位部骨折
- 骨粗鬆症について知ろう!専門医による解説~その7 胸腰椎圧迫骨折
- 骨粗鬆症について知ろう!専門医による解説~その8 腰部脊柱管狭窄症
- 骨粗鬆症について知ろう!専門医による解説~その9 変形性膝関節症
参考資料: