骨粗鬆症を知ろう!
専門医による解説~その6
大腿骨近位部骨折(大腿骨頸部骨折、大腿骨転子部骨折)について
はじめに
こんにちは。このページは整形外科専門医の金井による様々な整形外科疾患の解説ページです。元ページの「コツコツグルメ」は、金井が自身の臨床経験から「あったらいいな」と思うサービスを形にしたもので、骨粗鬆症専用の食事サービスです。骨の栄養に興味がある方は是非元ページもご供覧くださいませ。
今回の記事では「大腿骨近位部骨折」について、なるべく分かりやすく解説していきます。
大腿骨近位部骨折とは
脚の付け根である股関節の骨折です。「高齢者が転んで動けなくなった」が象徴的なエピソードですね。特徴は大きく三つ、「高齢者に多い骨折」「どのような体勢を取っても激痛」「自然治癒はしづらい」です。以上の特徴から別名「寝たきり骨折」と呼ばれています。転んだだけでこの骨折をした場合、丈夫な骨には起こらない事なので同時に骨粗鬆症と診断されます。
治療法は
リスクが高い90歳を超えるような超高齢者であっても、基本的に手術を勧められるはずです。理由は、放っておけば寝たきりになる公算が高いですが手術を受ければすぐに座ったり立ったりのリハビリに進めるので、手術による恩恵が非常に大きいからです。とはいえ手術とリハビリによっても元通り歩けるようになる方は約半数に限られ、多くの方は後遺症が残ります。このように、この骨折は手ごわい大怪我と言えます。
手術しないとどうなる?
心臓が悪いなど手術に耐えられない場合や、元々寝たきりで苦痛を感じていない場合などは手術は行えず鎮痛だけ行います。基本的に寝たきり生活になりますが、数ヶ月かけて痛みが軽減し車椅子に乗れるようになる方もいます。歩行はまず出来ないと考えた方が良いです。
どんな手術をするの?
まず骨折の種類を2つに分けます。大腿骨の内側だと大腿骨頸部骨折、大腿骨の外側だと大腿骨転子部骨折と呼びます。そのうち大腿骨頸部骨折は骨折がズレると手術方法が変わるのでズレが小さい安定型と、大きい不安定型に分かれます。よって①大腿骨転子部骨折②安定型大腿骨頸部骨折③不安定型大腿骨頸部骨折の3つに分かれます。それぞれ説明していきます。
大腿骨転子部骨折
骨と骨を繋ぐ「骨接合術」をします。皮膚を切る手術を「観血的」というので「観血的骨接合術」という手術です。骨の位置を整えて復帰する「整復」をしてから固定するので「観血的整復固定術」と言ったりもします。大腿骨の外側に3-4カ所の小さな皮膚切開を置いて、ドリルで骨に穴をあけてチタン合金製のインプラントを埋め込みます。インプラントは一生抜去せず入れっぱなしのことが多いです。
大腿骨頸部骨折 安定型
大腿骨転子部骨折と同じで、皮膚を切り骨と骨を繋ぐ「観血的骨接合術」をします。皮膚切開は大腿骨の外側に通常1カ所、5cm程度の皮膚切開を置きます。転子部骨折と同様ドリルで骨に穴をあけ、一生物のチタン合金製のインプラントを埋め込みます。
大腿骨頸部骨折 不安定型
大腿骨の内側の骨折でズレが大きい場合、大腿骨の頭を人工の物に置き換える人工骨頭挿入術を行います。術式が変わる理由は、骨折している付近に重要な血管がありズレが大きいと血管が破綻し大腿骨の頭が壊死してしまうためです。手術は大腿骨の外側に10~15cmくらいの皮膚切開を置いて、筋肉を避けて関節を切り開いて骨頭は切除し、残った大腿骨に穴を掘り、チタン合金のインプラントと人工の骨頭を埋め込み関節にはめ込みます。当然、インプラントは特段の事情が無い限り一生抜去せず入れっぱなしです。
手術の後
骨折の型や本人の体力、選択される術式にもよりますが通常数週間から数ヶ月間入院しリハビリをします。退院する際に生活様式の変容を余儀なくされる方も多く、介護保険を利用して社会福祉サービスの利用を開始する方や、これを機に施設に入所される方もいます。手術後の生活については、ご家族、本人、主治医、リハビリ担当者、看護師、ソーシャルワーカー等みんなでどうするのが一番良いか話し合って決めることになります。
あと、よく忘れられがちですが接合した骨を癒合させるのも術後の大事な仕事です。これがうまくいかないと偽関節になり再手術が必要になる場合があります。術後はしっかり骨によい食事を心がけましょう。
私から伝えたいこと
予防が大切です。大腿骨近位部骨折は上述の通り非常に手ごわい骨折なので、起こさないのが一番です。骨粗鬆症を理解し、まず食事と運動、診断がついたら薬をしっかり飲みましょう。それでももし片方の股関節が折れてしまったら、反対側が折れないようにしましょう。片方の股関節を骨折した方は反対側も骨折する可能性が4倍になると言われているからです。
おわりに
今回の記事は以上です。「大腿骨近位部骨折」についてなるべく分かりやすく解説しました。手前味噌ですが、この骨折の予防そして手術を受けた後のリカバリー食として「コツコツグルメ」をお役立て頂ければ幸いです。初回限定クーポン「FT20」でお得に試すことも出来ますよ。
次回は大腿骨近位部骨折と同じ「高齢者三大骨折」に含まれている「胸腰椎圧迫骨折」について解説していこうと思います。
過去記事一覧:
- 骨粗鬆症について知ろう!専門医による解説~その1 骨粗鬆症について
- 骨粗鬆症について知ろう!専門医による解説~その2 骨粗鬆症の予防と治療
- 骨粗鬆症について知ろう!専門医による解説~その3 骨に必要な栄養素
- 骨粗鬆症について知ろう!専門医による解説~その4 栄養療法とエビデンス
- 骨粗鬆症について知ろう!専門医による解説~その5 機能性原料と医薬品の違い
- 骨粗鬆症について知ろう!専門医による解説~その6 大腿骨近位部骨折
- 骨粗鬆症について知ろう!専門医による解説~その7 胸腰椎圧迫骨折
- 骨粗鬆症について知ろう!専門医による解説~その8 腰部脊柱管狭窄症
- 骨粗鬆症について知ろう!専門医による解説~その9 変形性膝関節症
参考資料: