女性ホルモン剤「SERM」について
骨粗鬆症を防ぐために!
専門医による解説~その15
はじめに
こんにちは。このページでは、整形外科専門医・金井が様々な整形外科疾患を解説します。今回は骨粗鬆症治療薬の中でも「SERM(サーム)」と呼ばれる薬について、分かりやすくご紹介します。
SERMとは?
SERMは「選択的エストロゲン受容体モジュレーター」という薬で、代表的な製品名は「エビスタ」や「ビビアント」などです。女性ホルモンの一部の働きを模倣し、骨に対してエストロゲンのような保護効果を発揮します。
なぜSERMが使われるのか?
SERMが骨粗鬆症治療で重要な理由は次の3つです。
・女性ホルモンの減少で骨が弱くなるのを防ぐ
・他の薬に比べて特定のがん(乳がん)リスクを下げる作用がある
・比較的安全に長期間使用できる
順に説明していきます。
女性ホルモンと骨の関係
女性は閉経を境に女性ホルモン(エストロゲン)が急激に減少し、骨密度が大きく下がります。SERMはこの減少の影響を部分的に補う薬で、骨密度の低下を防ぎ、骨折リスクを下げる効果があります。
SERMの特徴と効果
・骨折予防効果:特に脊椎(背骨)の骨折リスクを下げる効果が確認されています。
・がんの予防効果:エストロゲンの働きを乳腺で抑えるため、乳がんリスクを下げるという報告があります。
・ホルモン補充療法と違う:SERMはホルモンそのものではないため、子宮体がんのリスクを上げにくいとされています。
副作用は?
一部の方で以下のような副作用が報告されています:
・血栓症(足の腫れや痛み、肺塞栓など)
・ホットフラッシュ(顔のほてり)
・筋肉痛や関節痛
特に血栓症は重症化すると大変なので、既往のある方には使わないことが多いです。
他剤との併用は?
SERMは、ビスホスホネートやプラリアなど他の薬と併用することは少ないですが、切り替えとして使われることがあります。「閉経後まもない」「乳がんリスクも考慮したい」といった方に選ばれることが多い薬です。
食事との関係は?
SERMは薬としてのエストロゲン様作用で、食事から摂取する栄養素とは異なる働き方をします。よって、併せてカルシウムやビタミンDをしっかり摂ることでより効果が高まるとされています。
実際の効果(エビデンス)
研究によると、エビスタは脊椎骨折リスクを約30%低下させるとされています。一方で、大腿骨など非脊椎部の骨折には明確な効果がないというデータもあります。したがって、使い方には専門医の判断が必要です。
私から伝えたいこと
SERMは「骨とがんの両方を守る」可能性のある、閉経後女性にとってとても意義のある薬です。ただし対骨粗しょう症としての力は強くないのと副作用リスクもあるため、主治医の先生とよく相談して使用してください。
おわりに
今回は「SERM(女性ホルモン様作用薬)」について解説しました。
SERMはすべての人に適する薬ではありませんが、「自分に合った薬はどれだろう?」と考えるきっかけになれば嬉しいです。
次回は、骨粗鬆症治療薬四天王(骨密度上昇効果TOP4)の一角、飲み薬では最強の「ビスホスホネート製剤」についてご紹介しようと思います。
骨の代謝を調整する薬は、骨の材料がないと十分な効果が得られません。日々の食事から必要な栄養素(特にカルシウムとビタミンD)をしっかり摂る「骨活」も、治療の土台として欠かせません。
この記事のリマインドの意味を込めて「コツコツグルメ」の公式ラインを是非ご活用下さい。専門医からの定期メッセージが届きます。

【免責事項】 本記事の内容は、執筆時点でのガイドラインやエビデンスに基づき作成しておりますが、医学的情報の正確性や安全性を完全に保証するものではありません。 個々の患者様の病状や体質によって適切な治療法は異なります。自己判断での治療中断や変更は行わず、必ず主治医にご相談ください。
参考資料:
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創業医師 金井 研三(かない けんぞう)
東京生まれ湘南育ちの射手座。
横浜市立大学医学部卒、臨床経験10年超の整形外科専門医。
専門は脊椎外科。急性期病院で多忙な日々を送り研鑽したのち、地域医療に携わる。
地域における超高齢化と骨粗鬆症の増加に強い危機感を抱き、現役医師として働く傍ら、骨粗鬆症予防専門の食品と情報提供サービス「コツコツグルメ」を開発。予防医学×ビジネスに医師が直接コミットする必要性を訴えている。
「食から骨を守る」新しい仕組みづくりを通じて、SDGs目標3『すべての人に健康と福祉を』目標11『住み続けられるまちづくりを』の実現に貢献している。
日本の健康寿命を延ばし、骨折を減らして整形外科医の仕事をなくす――そんな未来を目指して、日々、啓発活動と臨床に取り組んでいる。