【専門医が解説】
骨粗しょう症について
~よく使う薬解説編
骨粗鬆症を防ぐために!
専門医による解説
~その20
はじめに
「骨粗しょう症と診断されたけれど、本当に薬が必要なの?」
「私は栄養と運動を頑張っているから大丈夫ですよね?」
よく聞かれる質問です。答えはこうです。
「それを調べるために医者がいます。」
食事や運動は骨の健康にとても大切です。
しかし、それだけでは骨折を防ぎきれないことがあるのです。
われわれ医師が必要だと判断したら、食事と運動を全うした上で薬も飲むべきです。
今回は、骨粗しょう症に関して、
『誰に薬が必要なのか』
『どのような薬が使われるのか』
分かりやすく説明します。
分かりやすくするため少し話を単純化してお伝えする部分がありますのでご了承下さい。
誰に薬が必要なのか
薬を使った方がいい人は、一言で言えば
『骨折する可能性が高い人』
です。先人達の膨大な研究成果から、骨折する可能性が高い人は下記の通りでした。
●骨折をしたことがある人
骨折をしたことが無い人に比べて骨折しやすいです。
特に股関節や背骨の骨折がある人は3-6倍くらい折れやすくなります。
●骨密度が低い人
骨密度が正常な人に比べて骨折しやすいです。骨折リスクは、
70%≦骨密度<80%の人で2倍くらい
骨密度<70%の人で3~5倍くらい
です。
●家族が股関節を骨折をしたことがある人
骨粗しょう症は遺伝の要素も強いです。骨密度は約70%が遺伝とも言われます。
家族に股関節の骨折があるだけで骨折する可能性は大体2倍くらいになります。
●特定の病気がある人
関節リウマチ、糖尿病、腎機能障害、慢性呼吸疾患、ステロイドを使っている方などです。
健康な人に比べてそれぞれ2倍くらい骨折しやすいです。
薬を開始する基準
上記の科学的根拠(エビデンス)を踏まえて、薬を使った方がいい人は、
**健康な人に比べて骨折リスクが3倍以上高い人**
と考えると分かりやすいと思います。
股関節を骨折した人(3-6倍)は、それだけで薬使用を推奨
家族が股関節を骨折した(2倍)人は、それだけでは当てはまりませんが、
さらに骨密度が70%代(2倍)であれば掛け合わせて4倍となり薬使用を推奨となります。
骨折リスクが3倍以上高い人に限った場合、
**『薬が最強だから使う』**という訳です。
栄養と運動は意味がない?
では、栄養と運動は不要でしょうか。
**当然ですが、意味はあります。**
栄養療法と運動療法の意義は、以下の2つと理解しましょう。
① 低い骨折リスクを維持する
② 薬の効果を下支えする
骨折リスクが低い人は、薬の効果が低いことが知られています。
その場合は栄養と運動により、骨折リスクが高くなるのを防ぎましょう。
骨折リスクがすでに高いなら、薬の方が圧倒的に効果が高いです。
しかし、その薬を使う時、
栄養や運動の不足があると薬の効果弱くなる、のです。
色々報告はありますが、
**栄養と運動をちゃんとしないと薬の効果は半減する**
とざっくりイメージしておいてください。
薬の種類
薬も様々な種類がありますが、3つに分類して理解しましょう。
① 基礎薬(ビタミン類、ホルモン)
② 骨吸収抑制薬(骨を壊さない)
③ 骨形成促進薬(骨を作る)
以上です。順に説明します。
基礎薬(ビタミン類、ホルモン)
骨代謝への影響はマイルドで薬の強さとしては弱めです。
リスクがそれほど高くない人に最初に使用したり、他の薬の補助として併用したりします。
●ビタミンD(商品名はエディロール、アルファロール等)
●ビタミンK(商品名はグラケー、メナテトレノン等)
●女性ホルモン薬(商品名はエビスタ、ビビアント等)
などです。
骨吸収抑制薬(骨を壊さない)
骨の代謝(作り替え)の内、骨を壊す破骨細胞を抑える薬です。
代謝亢進型(破骨細胞の働き過ぎ)で使われます。
効果が高く値段が安い、コスパ良好なものが多いです。(イベニティ除く)
●ビスホスホネート製剤(商品名はアレンドロン、ボナロン、ベネット、フォサマック等)
●デノスマブ(商品名はプラリア)
●ロモソズマブ(商品名はイベニティ)
➡このイベニティだけは例外で、骨形成促進薬でもある薬です。値段も高いです。
骨形成促進薬(骨を作る)
骨の代謝(作り替え)の内、骨を作る骨芽細胞を刺激する薬です。
骨密度を上げたり、骨折を予防する効果が高く、その分値段も高いです。
故に、骨折リスクが特別に高い方に限り、期間限定で使われます。
健康な人に比べて骨折リスクが5-6倍以上高い人
と理解すると良いでしょう。
●PTH関連製剤(商品名はフォルテオ、テリボン、オスタバロ)
●ロモソズマブ(商品名はイベニティ)
この2種類です。
薬の効果は?
代表的な研究から、各薬剤の効果を表にまとめました。
これで大分イメージが湧くのではないでしょうか。

この中で特に骨折リスク低下効果が高い
**「ビスホスホネート、デノスマブ、PTH関連製剤、ロモソズマブ」**
この4つを私は骨粗しょう症治療四天王と呼んでいます。
ちなみにPTHとロモソズマブで股関節骨折減少効果が確認出来ないのは、
「短期間(1-2年)使用の薬のため長期間経過が追えないから」という事情があります。
おわりに
『誰に薬が必要なのか』
『どのような薬が使われるのか』
分かって頂けたでしょうか。
各薬剤についてそれぞれ掘り下げた記事もあります。
⬇⬇記事一覧⬇⬇から是非見てみて下さい。
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参考資料・出典:参考資料・出典:
【既存骨折による骨折リスクの増加】 Kanis JA, Johnell O, De Laet C, et al. A meta-analysis of previous fracture and subsequent fracture risk. Bone. 2004;35(2):375-382.
【骨密度低下による骨折リスクの増加】 Marshall D, Johnell O, Wedel H. Meta-analysis of how well measures of bone mineral density predict occurrence of osteoporotic fractures. BMJ. 1996;312(7041):1254-1259.
【家族の骨折歴(大腿骨近位部骨折等)による骨折リスクの増加】 Kanis JA, Johansson H, Oden A, et al. A family history of fracture and fracture risk: a meta-analysis. Bone. 2004;35(5):1029-1037.
【骨密度の遺伝的要因(約70%が遺伝)について】 Ralston SH, Uitterlinden AG. Genetics of osteoporosis. Endocr Rev. 2010;31(5):629-662.
【特定疾患やステロイド使用による骨折リスクの増加】 van Staa TP, Leufkens HG, Abenhaim L, et al. Use of oral corticosteroids and risk of fractures. J Bone Miner Res. 2000;15(6):993-1000.
【栄養不足(ビタミンD不足など)が骨粗鬆症治療薬の効果に与える影響】 Adami S, Giannini S, Bianchi G, et al. Vitamin D status and response to treatment in post-menopausal osteoporosis. Osteoporos Int. 2009;20(2):239-244.
【エディロール(エルデカルシトール)の骨密度上昇および骨折予防効果】 Matsumoto T, Takano T, Nakamura T, et al. Eldecalcitol is superior to alfacalcidol in maintaining bone mineral density and preventing vertebral fractures in postmenopausal women with osteoporosis (EDIROL study). J Bone Miner Res. 2011;26(8):1770-1779.
【ビスホスホネート製剤(アレンドロン酸等)の骨密度上昇および骨折予防効果】 Black DM, Cummings SR, Karpf DB, et al. Randomised trial of effect of alendronate on risk of fracture in women with existing vertebral fractures. Fracture Intervention Trial Research Group. Lancet. 1996;348(9041):1535-1541.
【プラリア(デノスマブ)の骨密度上昇および骨折予防効果】 Cummings SR, San Martin J, McClung MR, et al. Denosumab for prevention of fractures in postmenopausal women with osteoporosis. N Engl J Med. 2009;361(8):756-765.
【PTH関連製剤(テリパラチド等)の骨密度上昇および骨折予防効果】 Neer RM, Arnaud CD, Zanchetta JR, et al. Effect of parathyroid hormone (1-34) on fractures and bone mineral density in postmenopausal women with osteoporosis. N Engl J Med. 2001;344(19):1434-1441.
【イベニティ(ロモソズマブ)の骨密度上昇および骨折予防効果】 Cosman F, Crittenden DB, Adachi JD, et al. Romosozumab Treatment in Postmenopausal Women with Osteoporosis. N Engl J Med. 2016;375(16):1532-1543.
【太極拳(高齢者の転倒予防効果)】
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【マラソン・長距離走(RED-S現象と骨密度低下リスク)】
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【ゴルフ(有酸素運動および身体機能の維持)】
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【社交ダンス(高齢者のバランス能力向上と転倒リスク低減)】
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【免責事項】
本記事の内容は、執筆時点でのガイドラインやエビデンスに基づき作成しておりますが、医学的情報の正確性や安全性を完全に保証するものではありません。
個々の患者様の病状や体質によって、適切な治療法や安全に行える運動の強度は異なります。すでに骨粗鬆症の治療を受けている方、骨折歴がある方、腰や膝などに痛みがある方は、運動を開始する前に必ず主治医にご相談ください。
また、本記事で紹介する運動中の転倒や怪我等につきましては責任を負いかねます。ご自身の体力に合わせて絶対に無理のない範囲で行い、運動中に痛みや強い違和感が生じた場合は直ちに中止してください。自己判断での治療中断や変更は行わず、必ず主治医の指示に従ってください。
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創業医師 金井 研三(かない けんぞう)
東京生まれ湘南育ちの射手座。
横浜市立大学医学部卒、臨床経験10年超の整形外科専門医。
専門は脊椎外科。急性期病院で多忙な日々を送り研鑽したのち、地域医療に携わる。
地域における超高齢化と骨粗鬆症の増加に強い危機感を抱き、現役医師として働く傍ら、骨粗鬆症予防専門の食品と情報提供サービス「コツコツグルメ」を開発。予防医学×ビジネスに医師が直接コミットする必要性を訴えている。
「食から骨を守る」新しい仕組みづくりを通じて、SDGs目標3『すべての人に健康と福祉を』目標11『住み続けられるまちづくりを』の実現に貢献している。
日本の健康寿命を延ばし、骨折を減らして整形外科医の仕事をなくす――そんな未来を目指して、日々、啓発活動と臨床に取り組んでいる。